生命保険がいらない理由

生命保険は本当に必要なのでしょうか?

生命保険文化センターの2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査(速報版)」(2021年9月発行)によると、

生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は89.8%と、日本のほとんどの世帯が生命保険に入っている事が良く分かります。

ここまで加入割合が多ければ、「ほとんどの人が入っているのであれば、入った方が良いのかな…」

というように感じるのも、ある意味当然ですよね。

しかし、考え方によっては、必ずしも生命保険は必要ない可能性もあります。

今回はその理由について、解説していきます。

遺族年金があるから

生命保険に加入する目的はずばり、万が一亡くなってしまったときというのがほとんどかと思います。

では、なぜ亡くなった時の為に、生命保険が必要なのでしょうか?

それはもちろん「残された家族が生活できなくなってしまうから」というイメージが多いかと思います。

では、もし生命保険に入っていない状態で万が一が起きた場合、完全に無収入になってしまうのでしょうか?

答えはNOです。

私たちのほとんどは年金を支払っているかと思いますが、この年金、実は生命保険の代わりになっているのはご存知でしょうか?

万が一が起きた場合、この年金は遺族年金というものに形を変えて、2か月に1回の頻度で支払われます。

遺族年金は収入や、子どもの有無によって変わってきます。

例えば、平均的な所得の方で、お子さんが2人いる世帯の場合、亡くなってしまった場合にもらえる遺族年金は年間で合計約180万円、1か月あたり約15万円ほどです。

家のローンがチャラになる

もし、住宅ローンを組んでいる場合には、通常住宅ローンには団体信用生命保険がついています。

この団体信用生命保険があるので、万が一契約者が亡くなってしまった場合には、住宅ローンの残りの返済は免除になるのです。

という事は、その分住宅ローンの支払いは浮くことになりますし、もしくはローンが無くなるので売ってしまうか、誰かに貸して家賃収入を得る事もできます。

ローンの支払いには金利に応じて利息が含まれていますが、団体信用生命保険の保険料がこの金利に含まれているのです。

もちろん、住宅ローンによっては、この団体信用生命保険を外すこともできますが、一般的にはつけている方が多いです。

最近では、ガン団信と呼ばれる、ガンになったらローンがチャラになるものや、三大疾病団信というものがあったり、非常にバリエーションが豊富になってきています。

もちろん、それでも不安であれば最低限の生命保険に加入する必要がありますが、これらを知らないまま何となく保険に入られる方も非常に多いです。

また、生命保険に入る理由の1つとして、「障害状態になって働けなくなってしまったときのため」という理由も多いと思います。

障害状態になったら障害年金がもらえる

生命保険は死亡保障と高度障害保障というのが通常セットになっておりますので、

実は高度障害状態になってしまったときでも、死亡保障と同じ額が保険会社からもらえるのです。

しかし、この高度障害状態になってしまった場合には、遺族年金同様、皆さんが払っている年金の中から障害年金というものを受け取ることができます。

勤続年数や年収によっても変わってきますが、平均的な所得の方が、1級の障害状態になってしまった場合

会社員で厚生年金を払っている方の場合で、1か月あたり約15万円ほど受け取ることができます。

ちなみに、1級の障害状態とは、日本年金機構によると以下のように表現されています。

他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。

出典:日本年金機構

2級になると、他人の力を借りなくても日常生活はかろうじてできるが、労働収入を得るのが難しいレベルと言われています。

先ほどの例の場合は、障害2級だと月間約12万円ほどの障害年金がもらえます。

障害年金だけでは不安、という場合には生命保険も検討の余地がありますが、生命保険の高度障害保障は非常に受給条件が厳しいので、必ずしも障害状態になったからと言って、高度障害の保険金が受け取れる、という訳ではないのです。

生命保険文化センターによると、高度障害で保険金が受け取れるケースは下記のような場合です。

両眼の視力を全く永久に失ったもの

言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの

中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの

両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの

両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの

1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの

1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの

出典:生命保険文化センター

上記の通り、高度障害の条件はかなり厳しいです。

働けない状態≠高度障害であるという点に注意が必要です。

最近では高度障害保障とは別に、働けなくなった時の保障として、就業不能保険というものも沢山販売されています。

この就業不能保険の場合は、高度障害よりは条件が緩和されていて、働けない状態≒就業不能となっています。

保険会社によっても条件は異なりますが、多い条件は2つです

  • 1級もしくは2級の障害状態にあること
  • 医師の指示により、在宅療養が必要な状態にあること

もちろん、働けるかどうかはその人によって異なりますので、就業不能保険に入れば、働けなくなったら必ずお金がもらえるわけではないので、この点も注意が必要です。

入る場合に注意したい点

生命保険はほとんどの人が加入しているので、あまり深く考えずに加入したくなるものです。

遺族年金の存在や、団体信用生命保険、障害年金の存在を理解した上で、それでも尚不安であれば、それらを考慮した上で、最低限の内容で加入されることをお勧めします。

一度契約してしまったら、掛け捨ての保険の場合は解約したとしてもお金は1円も返ってきません。

また、もししっかりと考えた上で加入したとしても、しばらく経つと何の為に加入したのか分からなくなるケースも多いです。

保険の担当者に提案時にもらった資料や、証券は必ずしっかりと保管をしておきましょう。

そして、定期的に内容を確認されることをお勧めします。不必要な特約などを沢山つけてしまうと、後から分からなくなって逆に不安になってしまう、という事があっては、安心の為に保険に入っているのに本末転倒ですよね。

保険会社は、皆さんが保険に加入した後も、手数料をもらい続けていますので、気にせずどんどんご質問などされると良いでしょう。アフターフォローもサービスのうちです。

どの保険に加入するかも大切ですが、誰から加入するのかも非常に大切です。長いお付き合いができる担当から加入した方がよいです。

もしくは、保険の担当とは別で、保険の事も含めて保険以外の事も相談できるようなファイナンシャルプランナーの担当をつけておくのもオススメです。