持ち家か賃貸か ゆがむ米住宅市場(NY特急便):日本経済新聞
ニューヨークはマンハッタンの1カ月の家賃の平均が約69万円になったようです。
年間にすると、約840万円。
日本の年収の中央値が令和2年時点で約400万円なので、日本の年収の2倍以上がマンハッタンでは家賃に掛かってしまうという状態になっています。
なぜ、ここまで家賃が上昇するのでしょうか?そして、このことは日本に住む私たちには無関係なことなのでしょうか?
今回は家賃が上がる要因について、考えていきたいと思います。
原因は住宅ローン金利の高騰
アメリカの家賃が上昇している主な原因の一つは、
連続するアメリカの利上げによる、住宅ローン金利の高騰です。
「アメリカの利上げってそもそも何だ?」と思われると思いますが、要するにアメリカの政策金利の上昇です。
政策金利とは、中央銀行が一般の市中銀行に対して融資をする際の金利です。
この政策金利が上下すると、国債の金利も一般的にはそれに連動して上下します。
国債は国の借金ですので、貸している人(国債を購入している人)には利息が支払われます。
そして、銀行は主にこの国債を購入してお金を増やしています。
国債の金利が上がれば、皆さんから高い金利でお金を預かっても利益が出ます。
ですので、預金金利が上がります。
銀行の預金金利が上がれば、皆さんの心理はお金を使うよりも預けておこう、という心理になるはずなので
物価が上がると、景気の過熱を抑える為に、金利を上げるのです。
そして、国債の金利が上がれば、当然銀行としては他の商品の金利も上げることができるので、住宅ローンの金利も上昇します。
住宅ローン金利が家賃に与える影響
住宅ローンの金利が上昇すると、家賃が上がる可能性があります。
なぜなら、賃貸需要が上昇するからです。つまり、買うよりも賃貸で家に住もう!という人が増えるからです。
住宅ローンを組んで家を買おうと思っても、金利が高いと毎月返済が大きくなってしまいます。
そうなると、ローンを組んで家を買うより、家賃を払って住む方が安く済むのです。
そして、賃貸で住もうという人が増えれば、家賃を上げても人が入るわけなので、当然家賃も上がる可能性があります。
仮に今の米国の住宅ローン金利約6%ほど(日本は固定でも1.5%程度)と同じくらいの住宅ローンで、5000万円の住宅を買った場合、毎月の返済は約29万円になります。
例えば東京で5000万円で売られている住宅ですと、賃貸なら15万円程度で借りられますから、賃貸の方が全然良いじゃん!という結論になります。
という事で、賃貸需要が増えます。
そして、賃貸需要が増えると、家賃が上がる可能性があります。
大家さんの立場からすれば、家賃上げても人が入るなら、家賃を上げますよね?
日本では居住中の物件の家賃を上げるのは至難の業ですが、
空室期間中や入れ替わり期間中は上げられますので、入れ替わりの多い都心部のエリアや単身者の需要の多いワンルームは家賃が上がりやすいと言えます。
投資用不動産の価格は、収益還元法といって、家賃で決まるので、家賃が上がれば価格が上がります。
また、ロシアとウクライナの戦争や、コロナによる輸入規制や円安による資源高も、不動産価格の高騰を押し上げています。
資源の価格が高騰することによって物価が上がることをコストプッシュインフレと言いますが、
需要の上昇により物価が上がることをディマンドプルインフレと言います。
例えコストプッシュインフレだったとしても、物価が上がれば売れるものの値段が上がるという事なので、本来なら給与にも遅れて反映されるはずです。
給与に反映されてくれれば、当然、その分家賃に払える余裕も増える訳なので、高い家賃でも住みたいという人は増えます。
家賃が上がれば物件価格は上がります。
マイホームと投資用不動産の違い
マイホームの場合は純粋に「欲しい!」という人が増えれば価格が上がります。
一方、投資用不動産の場合は、「実際にいくらで住んでくれる人がいるのか」によって、
つまり投資対象としての価値によって、価格が決まる点が、マイホームとは異なる点です。
自分が住みたいかどうかはさておき、実際に安定的に住んでくれる人がいるのであれば、投資対象として値段がつくのです。
マイホームの場合は逆に金利が上昇しても自分の年収が上がらなかった場合は、毎月の給料に対して、返済が占める割合が大きくなってしまうため、銀行の融資が厳しくなり、結果選択できる住宅の価格は下がっていく可能性があります。
そうなると、住宅価格が下落する可能性があり得るのです。
マイホームを購入する方が常に比較するのは、賃貸価格です。
同じ家にローンを返済しながら住むのか、賃料を支払って住むのか、を常に天秤にかけているのです。
賃料と比較したときに、大差ないか、もしくはほぼ変わらないのであれば、買ってしまった方が良いのでは?という心理になりますよね。
そう考えると、住宅価格は賃料と、ローン返済額があまり変わらない金額になるまで、下がっていく可能性があるのです。
金利は何によって決まるのか?
住宅ローンや預金の金利など、様々な金融機関で使われる金利が、政策金利というもの大きく左右される点については、前述の通りですが、この政策金利は一体何によって決まるのでしょうか?
政策金利は中央銀行によって決められます。日本で言えば日銀です。
日銀のトップは2022年7月時点では、黒田東彦氏ですので、実質黒田総裁が政策金利決定の実権を握っていると言えます。
一般的に中央銀行は政府とは独立して、独自で政策金利を決定することになっておりますので、基本的には政府が決めるのではなく、日銀が政策金利を決定します。
中央銀行の固有の仕事は、お金の発行と管理ということであり、これは、「人々が安心してお金を使うことができるようにすることである」といってもよい。そのための条件は2つある。まず、お金の価値が安定していることであり、これは、言い換えれば、「物価の安定」である。もうひとつは、お金の流通や、それを使った取引の仕組み──つまり、決済システムや金融システムが安定的に、また効率的に働くことである。
中央銀行:https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_1996/ko9606a.htm/
中央銀行の固有の仕事は、私たちが安心してお金を使えるように、物価を安定させたり、決済・金融システムを安定させることなので、そうなるような金利に調整される、と考えられます。
現日銀総裁の黒田氏の考えとしては、上記を達成する為に安定的な物価成長率として2%の上昇を目指していて、それを達成するまでは、金利の引き上げは無いと断言をしております。
このように、実際の景気や物価によって自動的に決まるという訳でなく、お金の番人としての役割を果たしてくれている中央銀行の中で、実際には話し合いによって決まっている訳です。
もちろん、トップである黒田総裁が全てを決めている訳ではないとは言え、その実権を握っている以上、その発言には注目が集まるのです。
そして、この黒田総裁の任期は2023年4月となっておりますので、もし日銀総裁が変わるということであれば、日本の政策金利が大きく変わる可能性もあります。